イマムラワタルのブログ

水道橋Words代表今村航のブログ。

最近読んだ本。

それもまたちいさな光 (文春文庫)

私は、今まで角田光代さんの本に出会える機会が無く、
今回も人に薦められて、という出会いでした。

「八日目の蝉」は、その方に良いと言われ映画を見たものの、
原作の方は未だ読む機会を作れず終いであります。

これと言った特徴、癖、思想などの前情報が一つも無い作家さんでしたので、
これを読み何かが分かるかもしれない、と、少々高揚しつつ読み始めました。

これといって、登場人物に特別な人は無く、それぞれの生活にも特別な物は無く、
かといって、特別な不幸も無く、特別な事件も無く。
それもまたちいさな光、読み進めるにつれ、その言葉が輪郭を持ってくるのです。

作中、失われた光も多々あるのですが、
それもまたちいさな光であったし、それもまたちいさな光を持ったのです。

それぞれの生活が、「普通」ではあるのですが、
「平々凡々」や「月並み」というそれとは違い、
読者の持つ普通から脱したものでは無いという表現が
妥当だと思います。
この生活が普通か?と問われれば普通では無いのですが、
異常か?と問われれば異常では無いのです。

そう、それもまたちいさな光なのです。

さて、作者の特徴、癖、思想などの前情報...
と、文頭で書きましたが、
巻末の角田光代さんと小島慶子さんの対談で、
角田さんはこの様な事を仰っていました。

「なるべくシンプルで特徴の無い文章に変えていった。」

はい。笑
私もそれは感じました。
初めて真剣に角田さんの文章を読みましたが、
知に足がつき構成のしっかりした物語と印象を受けました。

よし、もう一作何か読んでみよう。
そうに思える人でした。
出会えて良かったです。
食わず嫌いでしたがね。笑